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3月から初夏の陽気(あぜみち気象散歩67)  2018-04-27

●気候問題研究所 副所長 清水輝和子  

 
寒冬から一転暖春に
 この春は3月から急に気温が上昇し、寒かった冬がウソのように一転して暖かくなった(図1)。3月の平均気温は北・東・西日本でかなり高く、東日本では1946年の統計開始以来3月として第1位の高温だった。早春だというのに初夏の陽気の日もあり、25℃を超える夏日も現れた。記録的な暖かさでサクラの開花と満開が早まり、サクラ前線は急ピッチで北上した。4月に入っても暖春は続いたため、ナシやモモ、スモモなど果樹の開花が早まり、生育に影響が出ている。
 

図1 地域平均気温平年偏差時系列(2018年2月~4月) 気象庁
 
 4月20日には30℃を超える真夏日が、九州と広島の7地点で観測された。21日は島根県川本本町で32.1℃、22日は館林で32.1℃まで上昇し、21日は27地点、22日は28地点で30℃を超え、大型連休を前に、全国各地で夏の陽気となった。
 
十分な休眠と暖春で早い開花
 サクラや果樹の花は冬の間、低温にさらされる時間が短く休眠時間が少ないと、春に開花が遅れたり生育や品質に影響が出るといわれている。今冬は全国的に寒さがきびしかったので、サクラや果樹の花芽は十分休眠ができたようだ。きびしかった冬が終わり、3月は全国的に気温が急上昇したため開花が早まった。ソメイヨシノは高知の3月15日を皮切りに、平年より4~9日も早まり、仙台では12日も早く3月30日に開花した。満開も早く、関東より西では3月中に満開を迎えた。サクラまつりなどのお花見のイベントは開催期間と合わなくなり、関係者をあわてさせた。4月に入っても高温が続いたため、チューリップやツツジ、フジなど花がメインの観光地では、各地で見頃が前倒しとなった。
 
中緯度高圧帯強い
 なぜ、この春はこんなに暖かいのだろうか。図2の上空5000m付近の天気図を見ると、北極付近は冬の間は高気圧が強く寒気の放出が続いていたが、3月は高気圧が弱まった。また、寒波の一因となっていたロシア西部の高気圧も弱まって、3月は低気圧になった。(図3あぜみち気象散歩66参照)ユーラシア大陸を流れる偏西風は、冬季はロシア西部が高気圧だったので北へ蛇行し、寒気を日本へ南下させていたが、3月はロシア西部からシベリアに低気圧が停滞したので蛇行は弱まった。そして、中国大陸から日本付近、北太平洋にかけての中緯度は広く東西にわたり帯状に高気圧が強まった。
 

低緯度低くなり、中緯度高圧帯強くなる
図2 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2018年3月(平年値は1981年~2010年の平均値)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 

今冬はロシア西部で高気圧が強かった
図3 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2017年12月~2018年2月(平年値は1981年~2010年の平均値)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 さらに、注目したいのはアラビア半島南部から北太平洋の低緯度が広く低気圧になっている点だ。これは昨秋からラニーニャ現象が発生したため、赤道太平洋の中部から東部の海水温が低くなったことにより、大気が冷されて低緯度から低温のエリアが広がっていると思われる(図4)。日本付近の上空では、低緯度の低気圧とシベリアの低気圧との間で、中緯度帯は相対的に高気圧が強まっている。このような気圧配置になると、中緯度の高圧帯におおわれる地域は高温になりやすい。それに加えて、地球温暖化の影響で北半球の中緯度の気温は平年より高い状態が続き、ラニーニャ現象が発生して、半年以上経過した今もほとんど下がらない。
 

昨秋から発生しているラニーニャ現象
図4 海面水温平年差(2018年3月下旬) 気象庁
 
 

4月も中緯度高圧帯強い、ブロッキング高気圧で一時寒気南下
図5 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2018年4月上旬(平年値は1981年~2010年の平均値)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 4月に入って東シベリア沖の北極海にブロッキング高気圧が発生し、東シベリアにあった寒気が北日本に南下した(図5)
 北日本では季節はずれの雪の降る日もあったが一時的で、地上付近では低気圧が日本海から北日本を通ることが多く、南風が吹いて気温が上昇した。沖縄付近は低緯度の低気圧の影響で寒暖変動したが(図1)、日本付近から大陸の中緯度高気圧は強く、北・東・西日本は高温傾向で、初夏の陽気どころか真夏日さえも現れた
 また、この春の地上付近の天気図は「南高北低型」の気圧配置が多い(図6)。移動性高気圧の中心は日本の南を通り、低気圧は日本の北を通る天気図型で、全国的に気温が上昇するタイプだ。北を通る低気圧や前線に向かって、高気圧から吹き出す南風によって気温が上昇し、夏日や真夏日の日があった。
 

「南高北低型」で気温上昇
図6 地上付近の天気図(2018年4月21日15時)(気象庁の図を基に作成)
 
5月も高温
 気象庁の予測ではラニーニャ現象は春の間に終わる予想なので、太平洋の赤道付近の海面水温は東部~中部にかけて上昇してきた。それに伴って、低緯度の気温も上昇傾向となっている。日本付近では中緯度も低緯度も気温が高くなって、4月25日発表の気象庁の3か月予報では、5月も高温が続きそうだ。
 この春もうららかな陽気は少なく、夏のような太陽が照りつけ、暑さを感じる4月となっている。温暖化が進むにつれ春の期間は短くなる傾向で、日本人の季節感も変わっていくと思われる。
 

 
 
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