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堆肥化において発生する温室効果ガス 一酸化二窒素(N2O)の抑制方法  2012-12-12

●鳥取県農林水産部農林総合研究所 中小家畜試験場 池岡進 

 
背景と概要(要約)
 家畜糞の堆肥化過程において、二酸化炭素の約300倍の温室効果を持つ一酸化二窒素(N2O)が発生している。
 一酸化二窒素の発生は、一次発酵(高温発酵)終了後から、堆肥化がほぼ終了するまで数カ月程度継続する。福本らは小型実験装置を用いた試験において、一次発酵終了直後に完熟堆肥(亜硝酸酸化細菌)を添加することにより、一酸化二窒素(N2O)の発生を約80%削減することが可能であることを報告している。また、完熟堆肥の添加時期は、これに含まれる亜硝酸酸化細菌が高温に弱いことから、高温とならない一次発酵終了後としている。しかし、一次発酵終了後すぐに一酸化二窒素(N2O)の発生が始まるため、その添加時期が非常に短いことが課題であった。
 そこで、一次発酵中に完熟堆肥を発酵温度の低い堆肥表面に散布する方法を試験したところ、一酸化二窒素(N2O)の発生を抑制でき、添加期間を広げることが可能であると考えられた。
症状
 堆肥化過程において、一次発酵(高温発酵)終了直後から堆肥化がほぼ終了するまでのおよそ数カ月間、温室効果ガスの一つである一酸化二窒素(N2O)が発生する。
 これを抑制する方法として、完熟堆肥を添加する方法が報告されている。しかし、短い添加適期のため、現場への普及が課題であった。
原因
 糞尿に含まれるタンパク質や尿素などは、一次発酵(高温発酵)においてアンモニア(NH3)に分解され、その後、二次発酵において、硝酸(NO3-)まで硝化される。アンモニア(NH3)が硝酸(NO3-)に硝化される中間において、亜硝酸(NO2-)が生成される。これが一時的に蓄積することで、一酸化二窒素(N2O)が発生する(図1)
 
堆肥化における硝化作用
図1 堆肥化における硝化作用
 
 亜硝酸が一時的に蓄積する原因は、亜硝酸を硝酸に硝化する細菌の1種である亜硝酸酸化細菌の増殖が不十分で、硝化が一時的に停滞するためである。
 円滑な硝化を起こさせるために、亜硝酸酸化細菌を多く含む完熟堆肥(一般的に完熟堆肥には亜硝酸酸化細菌が多く含まれている)を添加し、一酸化二窒素を抑制する方法がある(福本らの報告)。しかし亜硝酸酸化細菌は高温に弱いこと、一酸化二窒素(N2O)の揮散が始まる前に添加する必要があることから、その添加時期が非常に短いことが課題であった。
対策
 一次発酵(高温発酵)終了直後に完熟堆肥(亜硝酸酸化細菌)を発酵物の10%添加することで、一酸化二窒素(N2O)を約80%削減できる(図2)(福本らの報告)。
 
豚糞堆肥化における完熟堆肥を添加した場合の一酸化二窒素抑制効果
図2 豚糞堆肥化における完熟堆肥を添加した場合の一酸化二窒素抑制効果
 
 添加時期は、一次発酵終了直後が望ましいが、現場においては、一次発酵終了の見極めが困難であるため、一次発酵中に発酵物の表面に散布しておく方法を検討した。
 完熟堆肥を堆肥化開始からごく早期に表面散布したものは、十分に発生を抑制できなかったが、堆肥化2週後に表面散布した場合は、一酸化二窒素(N2O)の揮散を抑制することができた (図3)
 
完熟堆肥の表面散布による一酸化二窒素の抑制効果(週1回切返し)
図3 完熟堆肥の表面散布による一酸化二窒素の抑制効果(週1回切返し)
 
 また、従来、水分調整材として利用されている完成した堆肥(完熟堆肥)は、この技術体系に組み込んで利用しやすい。
参考資料
・2006年度 畜産草地研究成果情報「亜硝酸酸化細菌の添加による家畜排泄物堆肥化過程でのN2O発生制御」
・農業および園芸 第84巻 第1号(2009年)「家畜ふん堆肥化における窒素保持」
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