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鶏舎気温や加齢に伴う血液性状の変化  2012-12-04

●徳島県立農林水産総合技術支援センター 畜産研究所 富久章子  

 
背景と概要(要約)
 開放鶏舎の鶏は、外界気象の影響を強く受ける。特に、夏期暑熱の影響は、生産性の低下や、熱死による損耗など、鶏卵・ブロイラー経営に大きな損失を与えている。
 鶏は、高温域での放熱を、主に熱性多呼吸(パンティング)で行うが、過度のパンティングは呼吸性アルカローシスを招く。このような血液中酸塩基平衡の不均衡は、血液pH、ガス分圧(pCO2、pO2、HCO3-)を通じて検討できるが、動脈血を用いた評価が一般的であり、野外で利用可能な正常値の範囲を示した資料が少ない。
 そこで、採卵鶏及びブロイラーの静脈血中のpH及びガス分圧を調査し、鶏舎気温や加齢の影響を検討した。その結果、採卵鶏の血液は、鶏舎気温30℃以上の場合、15℃以下と比較して、高pH、低pCO2、pO2、HCO3-となった。
 ブロイラーの血液pHは、季節間差(夏期>秋期)が認められたが、比較的狭い範囲で推移した。また、HCO3-は、pH同様に季節間(夏期>秋期)で差があり、同時に性(雄>雌)、週齢(4週齢<7週齢)間でも差があった。pCO2は、季節間差が認められなかったが、季節と週齢の間に交互作用が認められ、夏期7週齢および秋季4週齢が低い傾向にあった。
原因と症状
  高温環境の鶏は、皮膚、筋肉等の温度受容体の興奮により、呼吸中枢が反応し、パンティングを行う。パンティングは、末梢気管支の換気量を増し、血液中二酸化炭素の過剰排出により、低炭酸血症、呼吸性アルカローシスを招く。これら生理反応の結果、採卵鶏は、血液中HCO3-の低下が卵殻の石灰化に影響し、破卵が増加する。
対策
 採卵鶏の血液は、鶏舎気温30℃以上の場合、15℃以下と比較して、高pH、低pCO2、pO2、HCO3-となった。また、ブロイラーの血液pHは、季節間差(夏期>秋期)が認められたが、全データ平均値が7.354±0.051であり、比較的狭い範囲で推移した。また、HCO3-は、pH同様に季節間(夏期>秋期)で差があり、同時に性(雄>雌)、週齢(4週齢<7週齢)間でも差があった。pCO2は、季節間差が認められなかったが、季節と週齢の間に交互作用が認められ、夏期7週齢および秋季4週齢が低い傾向にあった。
 これらの結果は、静脈血を用いた調査であるため、野外の暑熱ストレス負荷状況の調査に活用可能である。
 
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参考資料
 笠原ら 2004 鶏舎気温や加齢に伴う鶏血液pH・ガス分圧・電解質イオン・ヘマトクリット値の変化 徳島県畜産研究所研究報告第4号:56-63
 笠原ら 2005 鶏舎気温や加齢に伴う鶏血液pH・ガス分圧・電解質イオン・ヘマトクリット値の変化(第2報) 徳島県畜産研究所研究報告第5号:41-52
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