寒冷紗被覆によるリンゴの日焼け果発生軽減効果と果実品質への影響 | 2011-01-11 |
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●長野県農政部農業技術課 玉井浩 |
背景と概要 | 温暖化の影響で夏に極端な高温が記録されるようになってきており、高温による果実の日焼け障害の発生が問題となっている。長野県では、リンゴ果実に日焼け果が多く発生し、早生種だけでなく中晩生種にも発生するようになった。以前、有袋栽培では、除袋時に寒冷紗を被覆して、日焼け発生を軽減していた。 ここでは、夏期に長期間寒冷紗を被覆することによる日焼け果発生軽減効果と、果実品質への影響を明らかにした。
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症状 | リンゴの日焼けは、程度の軽いものは果皮がやや変色し、程度が大きくなるにしたがい、白色や茶色に変色して褐変にいたる(写真1)。日焼け部分の果皮直下の果肉は、果汁が少なくなる傾向があり、食味が劣る。また、果皮直下の果肉がミツ入りすることもある(写真2)。     左 :写真1「つがる」の日焼け果 / 右 :写真2「つがる」の高温による果肉ミツ症状
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原因 | リンゴ果実の日焼けは、果面温度が果皮細胞が耐えられる温度以上になると組織が死ぬことで発生する。海外の研究結果では、果皮温度が45℃を超える状態で1時間以上経過すると発生すると報告されている。果実は、葉のように気孔がなく、果実からの蒸散がほとんど無いため、直射光が当たると果実の表面温度は容易に上昇する。 また、果実の日焼けには、紫外線の影響も大きいとされている。
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対策 | ア.寒冷紗被覆 樹冠に寒冷紗を被覆して、果実への直射光を低減し、果面温度を低下させると果実の日焼け発生が軽減する。   イ.かん水 干ばつで土壌からの水分吸収が劣ると、樹体内の樹液流動が停滞し、果実内の水分流動が滞ることで、果実自体の冷却能力が劣る。このため、樹液流動を促すためにかん水を行う。   ウ.着色管理(葉つみ)の時期と程度 葉つみ等の着色管理を行うと、日陰条件にあった果面の光環境がよくなる。早生種のように気温が高い条件下では、着色管理により果面温度が急激に上昇して日焼け発生となりやすい。気温の高い時期に葉つみを行う場合は、果面温度が十分上がった日中から実施する。また、極端に高温な場合は、気温が低下する夕方に実施するか、葉つみを行わない。
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具体的データ | 夏季の高温によるリンゴ果実の日焼け軽減対策としての寒冷紗被覆効果と果実品質に及ぼす影響を明らかにした(写真3)。  
写真3 寒冷紗被覆試験の様子 寒冷紗は、手前から#200(遮光率16%)、#300(22%)、#600(43%)   寒冷紗は、遮光率が高い方が果面の温度抑制効果が高く(図1)、日焼け軽減効果も高かった(表1)。  
図1 寒冷紗被覆下の果面温度推移(平成20年、長野果樹試) 果面温度は、8月12日に1.5~2mの高さの日当たりの良い果実の陽光面を調査。寒冷紗の遮光率:#200(16%)、#300(22%)、#600(43%)、対照は寒冷紗無し。6年生つがる/M.9供試     表1 寒冷紗被覆が日焼け果の発生に及ぼす影響(平成20年、長野果樹試)
寒冷紗被覆期間:7/30-9/1 寒冷紗の遮光率:#200(16%)、#300(22%)、#600(43%)。6年生M.9台木樹供試。 中以上率:日焼けにより果皮が黄色または褐色で等級の劣る果実割合     収穫果の果実品質(果実重、着色、糖度)は、寒冷紗被覆の影響はなかった。しかし、収穫を外観から2~3回に分けた場合、寒冷紗被覆した方が収穫進度が遅く、遮光率が高いほど遅れた)。  
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