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●農研機構 果樹研究所 薬師寺博 |
背景と概要(要約) | ブドウは、成熟期の高温によって着色不良になりやすく、近年の温暖化に伴い、西南暖地のみならず、関東の産地でも着色不良が増加する傾向にある。糖度や果房重などの品質は同等であっても、着色が劣る理由から評価が落ち、単価が下がる。夏季の高温下で着色不良になりやすい品種が知られる一方、「ブラックビート」など高温下でも安定して着色する品種がある。   ここでは、着色開始期の果粒を培養することによって、高温安定着色の品種・系統を簡易に判定できることを明らかにした。 |
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症状 | 「巨峰」や「ピオーネ」などの紫黒色品種では、成熟期の高温によって、着色が阻害されて「赤熟れ果」となる。また、「安芸クイーン」などの赤色系品種は紫黒色系品種に比べて、高温の影響が顕著に出て、緑色に近い果房になる。   一方、紫黒色系品種では、「巨峰」や「ピオーネ」に比べて高温下でも着色の優れる「ブラックビート」や「ダークリッジ」などの品種がある(写真1)。   写真1 高温下で栽培した成熟果の様子(紫黒色系品種)
 左 :巨峰 / 右 :ブラックビート   一般に、赤色系品種の高温耐性能力は低いが、「陽峰」は高温下でも着色が安定している(写真2)。   写真2 高温下で栽培した成熟果の様子(赤色系品種)
 左 :安芸クイーン / 右 :陽峰 |
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原因 | 着色不良の環境要因として、水まわり以降の高温や低日射によって、果皮中のアントシアニン合成が阻害されるために発生する。また、着果過多、植物生育調節剤による過大な果粒肥大や低糖度も着色不良を引き起こす。 特に、赤色系品種は、果皮中のアントシアニン含量が紫黒色系品種に比べて少ないため、これらの影響を受けやすく、着色不良になりやすい。 |
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対策 | (1)促成栽培 加温栽培や簡易被覆栽培等によって着色期を前進させ、着色期の高温を回避する。   (2)環状はく皮 満開後30~35日の環状はく皮は、地上部の同化産物を蓄積させて、着色を促す。「安芸クイーン」などの赤色系品種では、適正着果量より1~3割程度の着果制限をしないと着色促進効果は劣る。   (3)高温安定着色品種の導入 高温に対する着色不良耐性には品種間差異がある。紫黒色系品種では、「ブラックビート」、「ダークリッジ」、「紫玉」など、赤色系品種は「陽峰」が高温下においても着色不良になりにくい。導入に際しては、栽培管理の難易度や品種特性の確認が必要である。
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具体的データ | 高温下でも着色不良にならない品種が強く望まれているが、圃場やポット試験を用いた選抜試験では、多数の品種・系統の調査が困難である。そこで、スクリーニングの効率化を図るため、果粒培養を用いた簡易評価法を確立した。   具体的には、着色開始期(着色歩合1~2)の果粒を微生物培養用プレート上で培養して、着色を評価する。各穴に蒸留水で湿らせた脱脂綿を詰め、乾燥を防ぐために透明のプラスチック製密閉式コンテナ内に静置する(写真右上 ブドウ果粒の培養試験)。 光条件下30℃で10日間培養することによって、高温下で安定着色する品種・系統を選抜できる(写真4)。   果粒培養の品種間差異(30℃、10日間培養)
   30℃で培養した果粒と人工気象器の高温条件下で栽培した収穫果粒のアントシアニン含量は、両者間で高い相関関係(R2=0.71)を示し、果粒培養による簡易評価法の有効性が確認された。   果粒培養試験では、着色開始期の果粒を使用するため、果粒間の着色のばらつきが少なく、省スペースで比較できる長所がある。年次変動があるため、「巨峰」などの対照品種と併せて比較した方がよい。
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参考資料 | 1)鈴木勝征ら(1996).ブドウ新品種‘陽峰’の育成.福岡県農業総合試験場報告.15:73-76. 2)山田昌彦ら(2003).ブドウ新品種‘ダークリッジ’.果樹試験場報告.2:43-52. 3)山根ら(2007).ブドウ‘安芸クイーン’の着色実態および環状はく皮と着果量の軽減による着色改善.園学研.6:233-239. 4)薬師寺ら(2009).ブドウ果粒を用いた高温安定着色品種の簡易評価法.園学研.8(別2):416.
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