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(佐賀県)肉用牛における低コスト細霧装置による暑熱対策の検討  2023-10-18

●杵藤農林事務所杵島農業改良普及センター(※)   

 
[抄録]
 近年、温暖化の影響等により暑熱期の防暑対策が重要となっている。
 肉用牛においては送風機による暑熱対策が主流であるが、牛舎・牛房の温度低下を図るため、細霧装置を導入する事例もみられる。細霧装置を設置する場合は高い性能、耐久性、性能保証などメリットがあるものの、高額となり、導入の障壁となっている。
 そこで、普及センターでは農家自身で簡易に設置できる細霧装置を考案し、管内の肥育農家で実証した。その結果、設置コストを削減したうえで牛舎内の温度が2℃~3℃程度低下することが分かった。
 
[本文]
1.事例場所の概要
 佐賀県杵島郡は3町からなる県中央部に位置した平坦部であり、米麦大豆の土地利用型作物を中心とした営農が盛んな地域である。
 畜産においては黒毛和種肥育牛が約3900頭飼養されており、県内の約10%を占めていることから、佐賀県の銘柄牛である「佐賀牛」の生産の一端を担っている産地である。
 
2.活動対象及び概要
 活動対象は細霧装置の設置を検討していた黒毛和種肥育農家を対象とした。
 
3.背景・指導・ねらい
 管内は2018年の7月から8月の間に肥育牛の生産環境限界温度である30℃を超えた日数が55日間あり、連日猛暑が続いた(気象庁ホームページ 白石 7月から8月の気象データ)。
 このことから、肉用牛においては暑熱対策による生産性向上や事故率の低減を目的に細霧装置を検討する農家はいたものの、高額な設備投資となることから農家にとって抵抗があった。
 そこで、簡易に設置できる細霧装置を考案し、現場実証することでその効果について検討した。
 
4.具体的データ
(1)情報の内容・方法・特徴
・低コスト細霧装置の概要;別添資料1のとおり材料を準備し、設置した。本細霧装置は部品が軽量であることから簡易に組み立てできることが特徴である。
・対象家畜;黒毛和種肥育牛
・調査内容;牛舎内温度を細霧ありとなしの2か所で測定した。温度計は地面から2mの高さに設置した。
・検証期間;2019年7月15日~7月18日の4日間
・検証時間:農家が牛舎の作業を行う時間に合わせて6時から17時に細霧装置を稼働してもらい、1時間ごとの牛舎内温度を測定した。
 
(2)成果
・牛舎内の平均温度は細霧装置あり区のほうが細霧装置なし区と比べて-1.5℃ととなった。
・牛舎内の平均最高温度は12時に31.8℃だったが、細霧装置ありの区では28.3℃となり、細霧装置なし区を比べて-2.5℃となった。
・牛舎内の温度が最大で低下したのは15時であり、-2.7℃となった。
・上記のとおり、簡易な細霧装置でも気温を低下させることができた。
・設置経費は98㎡で82,105円かかり、1㎡あたり837円となった。配水管をチューブで代用し、動噴を小型化することで経費を半分程度に削減できた。
・部品が軽量であることから、簡易に設置できる。
・設置後もチューブを延長して面積を拡大することができる。
・研修会や巡回で紹介したところ、肥育農家で1戸、繁殖農家で1戸検討する農家が出てきた。
 
(3)普及活動上の留意点
・設置完了後は稼働させて、チューブがきちんと連結しているか確認する。
・細霧装置は適切な場所に設置し、大型送風機と組み合わせるなど工夫して冷房効果が上がる方法を利用する。
・設置経費については噴霧する先端であるノズルの数や設置面積によって変動する。
 
 
●別添資料1は>>こちら(pdfファイル:514KB)
 
※令和4年4月に「杵藤農林事務所杵島農業振興センター 」に名称が変更されています。
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