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(青森県)高温期に適した品種導入による夏期のこかぶ高品質安定生産  2018-12-21

●青森県 上北地域県民局地域農林水産部農業普及振興室  

 
[抄録]
 夏期冷涼な気候を活かして産地形成された葉つきこかぶは市場関係者からも高い評価を得てきたが、近年の極端な気象変動(異常高温)により地上部生育量不足に起因する一時的な品質低下(葉の萎れ・黄化)が発生するようになった。
 このため、有望品種選定や栽培最適化の展示ほを設置し、高温条件下でも品質低下の発生しにくい品種や栽培方法について検討を行った。
 検討結果を踏まえて導入した品種により品質低下が激減し、市場関係者から高い評価を得た。
 
[本文]
1.事例場所の概要
 野辺地町は、青森県下北半島の付け根に位置し、北に陸奥湾、南に烏帽子岳を抱える農業・漁業の盛んな町である。気候は、夏はヤマセの影響を受け冷涼であるとともに県内でも有数の豪雪地帯でもある。
 昭和50年代後半、冷涼な土地柄と少ない耕地面積でも高収益が得られる品目模索の結果、涼しい気候に適した「こかぶ」に着目し5aの試験栽培から産地化が進められ、現在は生産者40名で約90haのこかぶが作付けされている。
 
2.活動対象及び概要
 JAゆうき青森野菜振興会こかぶ部会を対象とし、高温期間の栽培に適した品種選定及び栽培最適化による高品質安定生産のための実証に取り組んだ。部会では高品質なこかぶの知名度・ブランド力向上に向けた取り組みとして、年数回卸売市場内や大手量販店等で部会員自らが消費宣伝活動を実施している。葉ごと生でも食べられる高品質生産への取り組みのPRのため、平成24年、「野辺地葉つきこかぶ」として地域団体商標を取得した。
 
3.背景・指導・ねらい
 夏期冷涼な気候を活かして産地形成された葉つきこかぶは、当初から一貫して食味・品質にこだわっており、栽培品種はシーズンを通じて品種を「玉里」に統一しており、この取り組みは市場関係者からも高い評価を得てきた。
 しかしながら、近年の極端な気象変動(異常高温)により地上部生育量不足に起因する一時的な品質低下(葉の萎れ・黄化)が発生するようになった。そこで、高温条件下でも地上生育量の低下が発生しにくく、これまでの「玉里」に近い品質を有する品種の探索や栽培最適化のために実証展示ほを設置し、新品種の円滑な導入による品質低下軽減を目標に普及指導活動を行った。
 
4.具体的データ 
(1)情報の内容・方法・特徴
 平成28年に有望品種選定の展示ほを設置し、既存品種「玉里」を対照に4品種を比較栽培し、地上部生育量及び黄化発生程度・収量・根部外観品質・食味について調査を実施し、「玉里3号」を有望品種として選定した。
 「玉里3号」は、既存品種「玉里」に比べ施肥要求度が低いとの情報が種苗メーカーから示されたため平成29年は、選定した「玉里3号」の減肥試験を行い、前年と同様の調査を行って適正施肥量の把握を行った。
 
(2)成果
 有望品種選定試験の結果を受け、平成29年は栽培面積約85haのうち夏期高温期出荷の18ha全てで「玉里3号」に切り替わった。また、減肥試験の結果から適正施肥量は、6月下旬播種の場合は「玉里」対比3~5割減、7月上旬播種の場合は2割程度減肥であることが分かり、平成30年度以降は品種・技術の組み合わせにより導入品種の特性を活かした更なる高品質化が見込まれる。
 また、市場関係者からは、「これまで発生していた茎葉の萎れや黄化が激減した。」との評価が得られている。
 
(3)普及活動上の留意点
 既存品種「玉里」を通年作付けしても茎葉の萎れ・黄化が発生しない技術の高い生産者もおり、彼らからは技術を高めることで品質を維持しようとする意見も聞かれたが、生産者全員の技術レベルを一気に高めることは困難である。
 技術を高めることと並行して品種の特性を利用した高品質生産の重要性について部会内の調整を重ねて意識統一を図りながら品種導入を進めたこと、茎葉黄化による品質低下については葉色値を用いて黄化程度を数値化して部会員に示したこと等が円滑な品種導入に繋がったと思われる。
 高品質多収に適した品種の探索は永遠のテーマであることから、今回の展示ほ設置を通じて得られた品種評価手法を更に高めて行く必要がある。
 
参考資料1(pdfファイルが開きます)
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