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温暖化が農業に与える影響
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地球温暖化の科学的な根拠 -観測と研究の歴史-【12】  2014-10-29

●NPO法人シティ・ウォッチ・スクエア理事長 林 陽生   

 
(11)都市温度上昇の実態からみた疑問(1)
 Jones et al.(1986)は、海洋データの不均質性はまだ十分に取りきれていない可能性があるが、20世紀における全球規模の気温変化の全体像を歪めるものではないとしつつ、の曲線を示した。縦軸は1970年代10年間の平均気温からの偏差、曲線(a)、(b)、(c)はそれぞれ北半球、南半球、全球の平均値の曲線である。
 
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(クリックで拡大します)
 
 曲線(c)は、地球全体を代表するものとして、ひときわ興味深い。134年に及ぶ経過のなかで温暖化が現れ、高温年の上位5位までが1978年以降に起こった。昇温する傾向は間違いないが、1930年代後半と1970年代中ごろに一端上昇が止まる時期が認められた。この要因として、温室効果ガス濃度の上昇だけでは説明できない外力の影響があると、彼らは考えた。
 
 ジョーンズらの研究が掲載されたのは、Natureという有名な科学雑誌である。Natureに投稿される論文は、理論の基礎部分に一定の評価が与えられたものが多いため比較的短くまとめられている。こうした点を考えるとNature論文としては比較的ページ数が多い。データベースの構築の部分は、先行する自分達の別の論文ですでに詳細に議論されたものであった。
 
 ジョーンズらが導いた結論に対して、Wood(1988)は疑問を投げかけた。彼が投稿した雑誌はClimate Changeである。当時、発刊して10年ほど経過した中堅の雑誌であった(現在ではインパクトファクターが高い雑誌の一つ)。この雑誌では、注目度が高まりつつある気候変動を主題とした論文が多く取り上げられており、そのなかで議論の的の一つは都市の昇温であった。
 
 ウッドの指摘は次の様である。ジョーンズらは、自ら陸上のデータの質を向上させるためさまざまな補正を行ったが、都市にある観測点のデータに対して、特定時期の人口を基準とした区分をおこなって解析した。そこで、郊外が都市へ発展するには一定の時間がかかるので、ジョーンズらのように都市か郊外かの判定を特定の時期を基準におこなうのは合理的でないことを指摘した。
 
参考資料
・Jones, P.D., T.M. Wigley and P.B. Wright: Global temperature variation between 1861 and 1984. Nature 322, 430-434, 1986
・Wood, F.B.: Comment: on the need for validation of the Jones et al. temperature trends with respect to urban warming. Climatic Change, 12, 297-312, 1988


 
 
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