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温暖化が農業に与える影響
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地球温暖化の科学的な根拠 -観測と研究の歴史-【11】  2014-10-17

●NPO法人シティ・ウォッチ・スクエア理事長 林 陽生   

 
(10)陸と海を統合した研究(その2)
 ジョーンズらが考えた海上と陸上気温を比較する方法は、実にアイデアに富んでいた。方法のみならず最新のデータベースを収集して解析を行った点でも、優れた研究だった。特に海洋に関しては、その当時最もデータ数が多い6325万のSSTデータを収録したCOADS (アメリカ海洋大気庁)を主とする2つのセットをつなぎ合わせ、連続した1861~1984年について解析をおこなった。
 
 前述したように、全球で陸域と海域を適当な割合で含む15領域を対象として陸上気温と海面上気温(MAT)を比較した。こうすれば、広大な海洋データに含まれる系統的なノイズを抽出できるだろう。はたしてかれらの予想どおり、隣接した陸上と海上の気温差には気象現象と明らかに異なる変化が現れた。時系列をに示す。縦軸は陸上から海上を引いた値を、上段(a)は北半球を、下段(b)は南半球の時系列変動を示す。黒い曲線は時間方向に重み付けをして求めた平均を示す。これによると、下記のように1861~1979年に3つの明瞭な期間が識別された。
 
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(クリックで拡大します)
 
 すなわち、3つの期間は次の通りである。1880年代までのMATが0.4~0.5℃高い期間、1900年代から1941年までのMATが0.1~0.2℃低い期間、1946~1979年の目立った差がない期間である。また、1880年代中ごろから1900年代後半までの間に(陸上-海上)の値が上昇している。さらに、1942~1945年の大戦中はMATが異常に大きいため、差がマイナス側に振れている。このほか、半球間の一貫性が認められる。
 
 期間に依存して現れた偏差の特徴は、MATに含まれるノイズ(気象的な要因とは考えられない差、すなわち修正すべき要素)と考えられるので、これを年代に応じて補正値に用い、より代表性に優れた全球規模の気温の時系列を求めた。かれらの結論では、最終的に得られた曲線は、海洋データの不均質性はまだ十分に取りきれていない可能性があるが、20世紀における全球規模の気温変化の全体像を歪めるものではないとした。
 
 最終的に得られた地球温暖化の曲線の特徴については、次回に述べる都市気温に関する議論で詳しく触れることにする。
 
参考資料
・Jones, P.D., T.M. Wigley and P.B. Wright: Global temperature variation between 1861 and 1984. Nature, 322, 430-434, 1986

 

 
 
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