地球温暖化の科学的な根拠 -観測と研究の歴史-【7】 | 2014-08-11 |
| ●NPO法人シティ・ウォッチ・スクエア理事長 林 陽生 | (6)観測とモデル | 古くは、前掲のカレンダーが行った研究のように、いわゆるモデル研究が、温暖化の将来予測のための温室効果ガス濃度上昇を駆動源とした大循環モデルの結果を検証するために、自ら地球規模の気温観測値を使い変動曲線を描いた。1980年代になると、気温データベースそのものの信頼性が高まり、将来予測の研究が進んだ。ただし当初は、陸上の観測点の値だけを使ってモデルを検証するに止まっていた。ミッチェルによって海洋データの重要性が指摘されたものの、全球の議論に組み込まれるほど十分な精度がなかったといえる。   このころ、モデル研究に関わる重要な結果がHansen et al.(1981)によって示された。図は、彼らが求めた過去の気温曲線(点線)と条件ごとの大循環モデルによる推定値(実線)の比較である。横軸は年、縦軸は相対的な気温偏差で、左列(a)は混合層(海洋の表層部分)の動態を含む大気海洋結合大循環モデル、右列(b)は躍層(深さ方向に急に海水温が低くなるより深い層)も含むモデルを使った結果で、上・中・下の曲線は、それぞれ大気中の二酸化炭素濃度の上昇(温室効果)のみ条件とした場合、それに火山活動(火山噴出物が大気中に大量に噴出して成層圏まで達し日射を遮る効果、および噴出粒子が太陽放射エネルギーを吸収して大気を暖める効果の平衡状態)を重ねた場合、さらに太陽放射量エネルギーの揺らぎを加えた場合に対応している。  
  モデルが地球規模の気温上昇を再現できる、という結論を導くロジックは次のとおりである。つまり、点線と実線が最も良く一致するのは右下の図であることが一目瞭然である。すなわち、温室効果ガス濃度の上昇のみの場合は全体的な上昇傾向を説明するが、それだけでは十分ではない(上段)。エル・チチョン(1982年)、セント・ヘレナ(1980年)、クラカトア(1883年)などの火山大噴火を考慮し(中段)、さらに周期的な太陽黒点数の変動を条件に加えると(下段)、現実の気温変動を非常によく説明できるようになる。加えて、海洋と大気の相互作用をより精密に再現(右列)することで推定精度が一段と高まる、というわけである。   モデル研究の本質について考えてみよう。上述のようにモデル実験では、モデルの構造や条件を変えながら推定精度を向上させる。一方、現実に現れる自然現象は唯一の実態である。モデル条件を変えながら推定結果を実態に合わせることで、推定精度が向上し将来予測の客観性が高まる。これがモデル研究の常套手段である。この技法は、ハンセンら以降も有効なものとして利用され、その後さらに精緻化が進んだ。   しかし、モデル研究だからといって疑いを持つ余地がないかというと、そうではない。これについては、次回に述べる。   参考資料 ・Hansen, J., D. Johnson,A. Lacis,S. Lebedeff,P. Lee,D. Rind and G. Russell: Climate impact on increasing atmospheric carbon dioxide. Science, 213, 957-966. 1981
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コラム:きのこ虫――近くて遠いふるさと(むしたちの日曜日107) |
その切り株は、街なかの小さな児童公園の隅っこにあった。
樹種は、はっきりしない。それでもそこに生えるきのこがサルノコシカケであることは、独特の形状から判断できた。
きのこ類の識別は、なかなかに難しい。
春に見るアミガサタケなら... |
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