全球あるいは半球規模の年平均気温を解明するには、海洋のデータが欠かせない。これは昔からの命題であった。オーストラリアとアメリカの研究者であるPaltridge and Woodruff(1981)は、海洋上にも計算対象とするグリッドを設定し、できるだけ長期間について信頼性の高いデータベースを作ることを試みた。一般に、観測期間が短いとサンプル数が多い。そこで、夏(6月~8月)期間と冬(12月~2月)期間を個別に計算し、その後両者の平均から年平均値を求めた。   彼らの解析対象地域を上図(Fig.1)に、気温時系列変化を下図(Fig.5)に示す。全球の図の、点を付けた部分は陸上データがある領域、斜線の部分は海面温度データがある領域をそれぞれ示す。図の右側の数値は、陸(L)と海(S)のデータがある領域の個数を示す。これらの領域の値を使い帯状平均値を求めた。   (クリックで拡大します)   (クリックで拡大します)   全球気温を算出するといっても、まだまだ代表地域が限られていたことがわかる。こうして求めた地球規模の平均気温が下図の黒点である。地上の観測値のみから求めたMitchell(1963)の結果(前掲)と比較すると、変動のパターンが遅れ極大値・極小値が10~20年後に現れている。この比較結果について、海洋の熱容量が大きいためとパルトリッジらは説明した。しかし同時に、変動のほぼ1サイクルに相当する期間しか示されていないため、今後の研究によるところが大きいとも指摘した。   まだ海洋データが不均質である点は否めず、緯度経度10度のメッシュで取り扱っても空間的な代表性は低かった。この原因とし、まだ船舶データには長期間連続した観測数が少なかったことがあげられる。この当時までの海洋データの特性については、本シリーズの3回目に述べたので、参考にして頂きたい。   参考資料 ・Paltridge, G. and S. Woodruff: Changes in global surface temperature from 1880 to 1977 derived from historical records of sea surface temperature. Monthly Weather Revies, 2427-2434. 1981 ・Mitchell, J.M.: On the world-wide pattern of secular temperature change. In: Changes of Climate. Proceedings of the Rome Symposium Organized by UNESCO and the World Meteorological Organization、 Arid Zone Research Series No.20, UNESCO, Paris, 161-181. 1963