地球温暖化の科学的な根拠 -観測と研究の歴史-【4】 | 2014-06-18 |
| ●NPO法人シティ・ウォッチ・スクエア理事長 林 陽生 | (3)初期の曲線 | 全球平均気温を求める際に難しい問題は、固有の観測地点における観測値の地点代表性の問題と広域の平均を求める方法の問題に大別される。両者はしばしば混在しているため、二つの未知数を一つの方程式から解を求めようとすることと類似で、原理的には不可能と考えられる。しかし研究史的にみると、さまざまな合理的な仮定が与えられ、少しずつ近似解が修正されて問題解決が果たされてきたといえよう。このような実用的な解法を数学でいえば、反復法(iteration)ということになる。   さて、IPCCが大きな役割を持ち始める前の時代の曲線に話を移そう。最初に紹介するのは、Callendar(1938)によるものである。本シリーズの2回目に掲載した曲線群のなかで、期間は短いが、ケッペンに次ぐ早い時期に世に出た曲線(オレンジ色)である。この研究の本質については前回説明した。つまり、当時の気温上昇量が温室効果で説明できることを定量的に明らかにした点に意義があるが、ここでは、その議論の過程で作成した全球平均気温の曲線について、少し詳しく紹介しよう。   カレンダーの研究では約200地点のデータを使い、近隣の観測地点間の気温差を比較することでデータの質を吟味した。解析に用いたデータの多くはWWR(World Weather Records)に収録されたもので、これは1923年の国際気象機関(IMO:International Meteorological Organization)の決議で始まった国際的事業の成果である。100年以上記録がある地点が18地点(このうち全期間データが連続しているのは2地点)で、この他の質のよい観測データを加えて地域グループに分け、代表する面積で重み付けし、全球の平均値を求めた。考察の部分では、地帯ごとの曲線を描き、近年に現れている気温上昇傾向は同時に進行した大気中の二酸化炭素濃度の上昇により引き起こされた、とした。   ここでは長期間連続したもののうちエジンバラとニューヨークについて、1901~1930年の平均値からの偏差を図に示す。1830年と1910年ころにピークがあり、その間の期間に約0.2℃低下する傾向が現れている。その後の論文と比較すると、フリーハンドで描かれた曲線はいかにも古くさい感じがする。しかし、当時としては最も質のよいデータを使ったもので、目を見張るべき成果だったに違いない。研究者達は、その後現在に至る期間にどのような変化が現れるか、何を予想したのだろうか。  
  カレンダーが利用したデータベースは、その後、世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)の支援のもとデータ収集が続けられ、世界の1000におよぶ地点について10年ごとに数値が更新され、新しい曲線を描く基データを提供することになった。   参考資料 Callendar, G.S.: The artifical production of carbon dioxide and itsinfluence on temperature. Q.J.R.M.S., 64, 223-240, 1938.  
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コラム:きのこ虫――近くて遠いふるさと(むしたちの日曜日107) |
その切り株は、街なかの小さな児童公園の隅っこにあった。
樹種は、はっきりしない。それでもそこに生えるきのこがサルノコシカケであることは、独特の形状から判断できた。
きのこ類の識別は、なかなかに難しい。
春に見るアミガサタケなら... |
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